梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その67|環境の変化の変化がものづくりを変えていく

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

環境の変化の変化がものづくりを変えていく

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表彰の賞品に自作のプラモデルや奥さん手作りの繭で作った人形などをプレゼントしたりして、子供たちの学校生活では記憶に残る思い出の授業になっている。

熱血指導は学校や保護者からの評価も高く、依頼を受けて放課後教室などにも参加している。この中から将来、養蚕に興味を持ってくれる人が出てくれれば、養蚕家としてもうれしい。

「いまは、畑が減ってしまって、年に2回しか養蚕ができません。私は、年間1トンを取った時代を経験していませんが、気持ち的にはそういう時代に少しでも近づけるように、養蚕農家を続けていきたいと思っています」

かつて八王子の街を支え、日本経済を支えた養蚕がいまでも続けられているのは、うれしい。しかし、桑畑の問題は象徴的だ。伝統的なものづくりが少なくなっていくのは、ものづくりに従事する人たちに原因があるのではなく、ものづくりを継続することを拒むように環境が変化しているのだということなのである。

伝統的なものづくりを守れるかどうかは、社会の問題でもあるということだろう。

4眠から覚めたカイコは腹をすかせていて、これから繭づくりをするまでの約10日間、むさぼるように桑を食べる。養蚕農家にとっては給餌や世話で最も忙しい時期だ(写真は長田さん所蔵)。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
地球の歩き方「Look Back Japan –ものづくり強国日本の原点を見に行く」連載中!