梶文彦の「ニッポンものづくり紀行」 その73|鑓水商人の繁栄ぶりをしのばせる諏訪神社・永泉寺

これからの日本のものづくりを見据えるために、過去の出来事やその成り立ちに関する情報を提供するコラム。発想を変えたい時やちょっとした仕事の合間にご覧ください。

鑓水商人の繁栄ぶりをしのばせる諏訪神社・永泉寺

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絹の道をさらに下ると、5分ほどで、右から道が合流する。このあたりが、谷戸が入り組んだ鑓水の村の谷が収れんする、鑓水村の中心地である。ここを右に折れて少し行くと、右に小さな階段と、その上に鳥居が見える。諏訪神社である。

階段を上がると、鳥居、神楽殿、拝殿・本殿と3段になり、境内のあちこちに石灯籠がある。これらはすべて鑓水商人の寄進になるもの。

年代は文政~嘉永年間(1820-50年代)のものだが、台石に寄進者の名前が彫られている。江戸末期の鑓水商人の隆盛ぶりがしのばれる。

一番上段の奥にある本殿は、実は本殿ではなく、本殿を納めた覆屋とでもいうべきもの。ここには諏訪神社、子の神神社、八幡神社の3つが祀られており、それぞれの本社がこの覆屋の中におさめられているのだ。

さて階段を下りて、道を戻ると大栗川にかかる御殿橋に出る。八王子市の史跡「絹の道」の終点、御殿橋である。当時は近くに公民館がありその前に建てられていた道標が橋のたもとにある。正面に「此方 八王子道」左に「此方 はら町田・神奈川・ふじさわ」右に「此方 はし本・津久井・大山」と書かれているのがわかる。

道標を右に見ながら左に進むと永泉寺だ。ここの本堂は、明治17(1884)年の火事で焼失してしまったために、八木下要右衛門の屋敷が移築されたものだ。お寺の本堂には珍しく破風造りの玄関があるのはそのためだ。

戻って橋を渡り、道を南に進むと右手に小泉家の屋敷(写真は前出)が建っている。個人宅なので、外から静かに拝見しよう。
エアポケットのように残された牧歌的な鑓水の村と絹の道。この区間はぜひ、往時をしのびながら散策をしてみたい。

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梶文彦氏執筆による、コラム「ニッポンものづくり紀行」です。梶氏は、長い期間にわたりものづくり企業の国内外でのコンサルティングに携わり、日本製造業を応援しています!
地球の歩き方「Look Back Japan –ものづくり強国日本の原点を見に行く」連載中!